2011年08月19日

”投げやり”じゃないからサ

戸田奈津子先生をはじめ、映画などで外国語から日本語への翻訳作業を行ってる方々は、本当に御苦労さまだと思う。

あの短い中で、意味をわからせるように訳すのは、通常の・・・例えば入試で英文を日本語に直すことなど・・・とは違うレベルの難しさがあるはずだと思う。

しかし、いろんな映画とかを見ていくと「え、えええ?」と、英語が怪しげな私でさえ首をかしげる訳文があるのも確かだ。

その反対に、私が今まで見た中で最高の「名訳」だと思ったのは、アメリカ映画『M*A*S*H』の、テレビ版日本語吹き替えのセリフ。

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詳しいストーリーは、またそれぞれ見ていただくとして・・・。

朝鮮戦争で朝鮮半島に駐留している陸軍野戦病院(M*A*S*H)が、慰問の一貫として本隊のアメフト・チームと試合をすることになった。同時に、どちらのチームが勝つか、賭けも始まった。主人公たちのいるM*A*S*Hは、勝って膨大な賭け金を狙うため、元有名プロ・アメフト選手だった脳外科医をスカウトする。その選手のプロ時代のあだ名は、「ヤリ投げのジョーンズ」という。

M*A*S*Hにやって来た「ヤリ投げのジョーンズ」に対し、主人公たちや看護婦たちが群がり、こう聞くのだ。

「どうして『ヤリ投げのジョーンズ』って呼ばれているの?」

それに対するジョーンズの回答が、日本語の吹き替えでは・・・

「”投げやり”じゃないからサ」というものであった。

最初にテレビでこのシーンを見た時、思わず大爆笑してしまった。「お見事!」という感じの訳。もちろん、原語がそうなっているわけではないだろう。日本語字幕のセリフも全く違っていて・・・

「昔、ヤリ投げを・・・」

という、いたってどうということのないセリフだった(DVD版の日本語字幕による)。

原文に正しく訳すというのが翻訳の第一の使命であるなら、前者の吹き替え版の訳者の仕事は、明らかに間違っている。

しかし、この「M*A*S*H」というブラックコメディな映画全体を貫くムードというか、世界観から考えると「”投げやり”じゃないからサ」というセリフが、俄然、魅力的に響くのである。翻訳者の方は、この映画の本質を、非常によく捉えているように思えるのだ。

「M*A*S*H」の日本語吹き替え版を誉める例をあげたが、字幕担当者の工夫についても触れておきたいと思う。この映画、DVDの日本語字幕にもなかなかシャレたものがいろいろある。一例をあげると・・・

「ホットリップスなどホットけ」

これだけ見ると何が面白いのかよくかわからないと思うし、オヤヂ・ギャグ以下にも思えるだろう。しかし、この訳文も「M*A*S*H」という映画の雰囲気を非常によく伝えていると思う。しかも、字幕という「文字」だからこそ伝えられる面白味がある。

たぶん、この映画をご覧になった方はとニヤリとされたかもしれない(ちなみに、このセリフはハモンド将軍がヘンリー・ブレイク大佐に言ったセリフである。テレビの日本語吹き替えでのセリフでは『熱い唇かね? 寝てやりたまえ!』となっていて、これもかなりの名訳である)。

通常の映画なら、ちょっと飛び過ぎの日本語吹き替え、日本語字幕であるが、この映画も持つパワーがそれを許しているのかもしれない(だから、この映画、私は大好きなのである)。

こうなると、もはや言葉遊びに近い段階に入ってしまっている。

「昔、やり投げをやってたからサ」
「ホットリップスのことは放っておけ」

でも、意味的には何の問題もない。伝達効率というものから言葉を考えるなら、必要充分なのである。でも、お腹の底から「フッフッフ・・・」という笑いがこみ上げることはない。

結局、コミュニケーションの力というものは、伝達効率だけでなく、こういった”遊び”の部分に宿るのではないかと思う。しかし、それが上手くはまるか、はまらないかで、コミュニケーションを豊かにするものになったり、無駄話しになったりする。匙加減が難しいのである。

重要なのは、人に何かを伝えるという作業において、”投げやり”じゃないからサ、と言えるだけの汗をかいているかどうかなんだと思う。
(う〜む、なかなか予定調和的な終わり方だったなぁ)

2011年08月17日

おせっかい

・・・といっても、ピンク・フロイドの話題ではなくて。

最近、ネットをやっていると、どうも「もう放っておいてくれ!」と言いたくなることが多くって。

グーグルも、ひと文字入力するたびに、どんどん候補が表示されてくる。打ち間違おうものなら、望みの検索語とは全く違う言葉が羅列され、イラッとすることはなはだしい。

ここのところ、Facebookをよくやっているのだが、あれもページにアクセスする度に、「友達を手伝ってあげましょう」「友達探しをお手伝いしましょう」なんて表示されるのだが、ハッキリ言って、いらぬお世話だって・・・。

誰かがFacebookにアクセスして、そのたびに私の写真が出て「友達探しを・・・」なんて表示されてたら、何か都会の中で孤独にさいなまれているようで、はっきりいって、イヤだもんなぁ。

それとね、友達欲しい時は、自分でちゃんと見つけるって。

あともうひとつ、Facebookでは「知り合いかも?」と、友達の友達なんかを表示するわけだけど・・・たいがい、知らんって。別に、知り合いたいとも思わないって・・・。

ただ、これはたまに有名人が出てきたりして「おっ!」と思う時もあって、楽しいと言えば楽しいですな。この前はジョン・ポール・ジョーンズが出てきて、一人、ニヤニヤしてしまったけど。

あれもこれも、ネットというかSNSを活かした手とり足とりのサービスなんだろうけれど、おせっかいもほどほどにしてもらいたいなぁ、と思う今日この頃。

こういうのって、少しぐらい不自由な方がいいように思うのだが・・・。
posted by taney at 17:17| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑感